悪人は生け置かんぞ

「悪人を生け置いてたまるか、悪人は生け置かんぞ」 そして、また引っくり返って手足をびくびくと動かしだした。僧は一生懸命になってお経を唱えた。僧の顔には汗が出ていた。「悪人を生け置いてたまるか、悪人は生け置かんぞ」 小供はまたこう叫びながら、体を悶掻《もが》いて畳の上を転げ廻った。「悪人を生け...

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非常に人の同情を惹いた

 親実はじめ八人の死は、非常に人の同情を惹いた。それと共に親実の小高坂《こだかさ》の邸や木塚村の墓所には、怪しい火が燃えたり、弾丸のような火の玉が飛んで、それに当った人は即死する者もあれば、病気になる者もあった。これは八人の怨霊であると云いだした。八人御先、この恐ろしい八人の怨霊の噂は、大高坂を中心...

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暗い晩

 常七はのっそりと起ちあがって外へ出た。暗い晩で、川の水が処々鉛色に重《おも》光りがして見えた。石を重りにして磧へ着けてあった渡舟の傍へ往くと、常七は踞《かが》んで重りの石を持って舟へ乗り、それから水棹《さお》を張った。「渡船……」 三度目の声が鼓膜を慄わして響いた。「お――い」 舟は中流へ...

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