梅《うめ》の木《き》のはちの巣《す》

 まだ、ほおがいくらかはれていました。そのうちに、勇《いさむ》ちゃんは梅《うめ》の木《き》のはちの巣《す》を見《み》つけました。「あ、はちが巣《す》をかけているよ。」といって、勇《いさむ》ちゃんは梅《うめ》の木《き》見《み》あげながら小《ちい》さな太《ふと》い指《ゆび》でさしました。 光子《みつこ》さんは、胸《むね》がどきどきしました。「さあ、たいへんだ!」と思《おも》ったからです。このあいだの怒《いか》りもあって、勇《いさむ》ちゃんはきっと、このはちの巣《す》を取《と》るにちがいないと思《おも》いましたから、光子《みつこ》さんがおどろいたのもむりはなかったのです。はたして、勇《いさむ》ちゃんはあたりを見《み》まわして、なにか棒《ぼう》がないかとさがしていました。「ねえ、勇《いさむ》ちゃん、このはちは、ひとりぽっちでかわいそうなのよ。」と、光子《みつこ》さんはあわれっぽい声《こえ》で、いいました。「ひとりぽっちなの?」と、勇《いさむ》ちゃんは、ふしぎそうにききかえしました。「え、そうなの。二|匹《ひき》でいたのが、一|匹《ぴき》いくら待《ま》っても、もうかえってこないの。」と、光子《みつこ》さんは答《こた》えました。「ほんとう、どうしたんだろうな。」と、勇《いさむ》ちゃんは目《め》をまるくしました。「いたずらっ子《こ》に殺《ころ》されたのか、わるいくもの巣《す》にかかったんだろうって、お母《かあ》さんがおっしゃってよ。」 勇《いさむ》ちゃんはなんと思《おも》ったか、だまって、たった一|匹《ぴき》巣《す》に止《と》まっているのを見《み》ていましたが、「かわいそうにね。」といって、きゅうに、はちをいたわるようにながめていました。「まあ、よかった! やはり勇《いさむ》ちゃんはやさしい。」と、光子《みつこ》さんは心《こころ》の中《なか》で思《おも》いました。「勇《いさむ》ちゃん、あんまりタマをいじめちゃいやよ。」といって、光子《みつこ》さんは奥《おく》から子《こ》ねこをだいてきました。 勇《いさむ》ちゃんは、にこにこして両手《りょうて》を出《だ》していました。

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