梅《うめ》の木《き》の下《した》

 いつか、勇《いさむ》ちゃんが水《みず》たまりへ水《みず》を飲《の》みにおりてきたはちを、持《も》っていた棒《ぼう》でたたきおとして殺《ころ》したことがあったのです。 いずれにしても、一|匹《ぴき》のはちはなにかの不幸《ふこう》に出《で》あって、もうかえってこないもののように思《おも》われました。光子《みつこ》さんは、また、梅《うめ》の木《き》の下《した》にもどってきました。「まだかえってこないのか。どうしたんでしょう、ひとりで、さびしくない?」といって、巣《す》にとまっている一|匹《ぴき》のはちに話《はな》しかけました。 けれど、ものをいうことのできぬはちは、ただ巣《す》にとまってじっとしているばかりでありました。ちょうどそこへ、勇《いさむ》ちゃんが遊《あそ》びにきましたから、光子《みつこ》さんは梅《うめ》の木《き》の下《した》をはなれてしまいました。「光子《みつこ》さん、まだ梅《うめ》の実《み》がなっているね。もう梅《うめ》の実《み》はあまくなった?」といって、勇《いさむ》ちゃんは梅《うめ》の木《き》を見《み》あげました。 光子《みつこ》さんは、勇《いさむ》ちゃんがはちの巣《す》を見《み》つけたらたいへんだ、きっとそのままにしておかないと思《おも》いましたから、「勇《いさむ》ちゃん、こっちへいらっしゃい。きれいなお人形《にんぎょう》さんを見《み》せてあげるわ。昨日《きのう》、よそのおばさんにいただいたのよ。」といいますと、勇《いさむ》ちゃんは日《ひ》にやけたまっ黒《くろ》な顔《かお》をして、「お人形《にんぎょう》さんなんか、いいよ。それより、ねこをつれておいでよ。」と、いいました。 勇《いさむ》ちゃんは、ねこが大《だい》すきなのでした。「タマは、いまいないの。」と、光子《みつこ》さんはタマを出《だ》すまいとしました。 なぜなら、勇《いさむ》ちゃんはあまりかわいがりすぎて、ねこを苦《くる》しめたからです。「どこへいったの?」

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