光子《みつこ》さんはしんぱいになりました

 しかし、それはほんとうにすこしずつしか大《おお》きくならなかったのです。二|匹《ひき》のはちが小《ちい》さな口《くち》にくわえてきた材料《ざいりょう》を、自分《じぶん》の口《くち》から出《で》るつばでかためていくのでありましたから、なかなかたいへんなことです。けれど、はちは、たゆまずうまずに、朝《あさ》も晩《ばん》も巣《す》をつくることに、いっしょうけんめいでありました。 ところが、どうしたことか、そのうち巣《す》にとまっているのがいつも一|匹《ぴき》であって、もう一|匹《ぴき》のすがたが見《み》えなくなったことです。「どうしたんでしょう?」と、光子《みつこ》さんはしんぱいになりました。 光子《みつこ》さんはお母《かあ》さんのところへ走《はし》っていきました。「ねえ、お母《かあ》さん、はちが一|匹《ぴき》いないのよ。いつも二|匹《ひき》のがどうしたんでしょうね?」といって、きいたのであります。「そうね、きっとそのうちにかえってくるでしょう。」と、お母《かあ》さんにもすぐにはわからなかったのでした。「もう、ずっとかえってこないの。一|匹《ぴき》がさびしそうにしているの。」と光子《みつこ》さんは、なんだかひとりのこされたはちの身《み》の上《うえ》を思《おも》うと、気《き》が気《き》でなかったのです。「どうしたんでしょうね。いたずらっ子《こ》にでも殺《ころ》されたか、悪《わる》いくもの巣《す》にでもかかって、かえれないのかもしれません。」と、お母《かあ》さんはおっしゃいました。 ――悪《わる》いくも――ということが、すぐに光子《みつこ》さんの頭《あたま》に強《つよ》くひびいてきました。いつであったか、ひさしから木《き》の枝《えだ》にかけていたくもの巣《す》に、はちがかかって、とうとうくものために殺《ころ》されたのを見《み》たことがあったからです。また、その巣《す》には、せみもかかれば、ちょうもかかったのでした。さいしょ、これらの虫《むし》がとんできて、目《め》に見《み》えない細《ほそ》い糸《いと》に足《あし》をとらえられると、逃《に》げようとしてもがきます。しかし、いくらあせっても、もちのように糸《いと》がねばりついて、足《あし》にからみつくばかりです。そのうちに、虫《むし》は弱《よわ》ってしまう、そのとき、どこからか黒《くろ》い大《おお》きなくもがあらわれてきて、するどい口《くち》で生《い》き血《ち》を吸《す》ってしまうのでありました。 そのありさまを思《おも》いだすと、この勤勉《きんべん》なはちもそんなめにあったのではないかと、いたましいすがたが想像《そうぞう》されたのです。そればかりではありません。また――いたずらっ子《こ》に殺《ころ》される――というしんぱいも、ないではなかったのです。

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