植田の者

 人びとはこう云って恐れた。最近になっても植田の者はその七人御先の墓の傍へ近寄ると、きっと奇怪なことが起った。明治になってからも二人の壮《わか》い男が、其処へ草刈りに往ったことがあるが、一人の男は、「七人御先の墓地へ入らんようにしよう、植田の者に祟りがあると云うから」 と云うと、一人の男は笑って、「そんなことは昔の迷信よ、今時そんなことがあってたまるものか」 と、うち消して二人でその墓地へ入って、草を刈っていると、黒い蛇が棹立ちになって二人の前へ出て来た。二人は鎌も何も捨てて置いて逃げだした。蛇は二三丁も二人を追っかけたがやっと見えなくなった。 私たちが少年の時に恐れた七人御先は、この新改の七人御先であるように思われる。

 ある日《ひ》、光子《みつこ》さんは庭《にわ》に出《で》て上《うえ》をあおぐと、青々《あおあお》とした梅《うめ》の木《き》の枝《えだ》に二|匹《ひき》のはちが巣《す》をつくっていました。「おとなりの勇《いさむ》ちゃんが見《み》つけたら、きっと取《と》ってしまうから、私《わたし》、知《し》らさないでおくわ。」 そう思《おも》って見《み》ていますと、一|匹《ぴき》ずつかわるがわるどこかへとんでいっては、なにか材料《ざいりょう》をくわえてきました。そして、一|匹《ぴき》がかえってくると、いままで巣《す》にとまって番《ばん》をしていたのがこんどとんでいくというふうに、二|匹《ひき》は力《ちから》をあわせてその巣《す》を大《おお》きくしようとしていたのです。 そののち、光子《みつこ》さんは毎日《まいにち》梅《うめ》の木《き》の下《した》に立《た》って、その巣《す》の大《おお》きくなるのを見《み》るのがなんとなくたのしみでありました。「もう、今日《きょう》はあんなに大《おお》きくなった。」

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