珠数《じゅず》をつまぐりながら

「ではお上人《しょうにん》、一つ加持《かじ》をしてみて下《くだ》さい。」 といいました。坊《ぼう》さんが承知《しょうち》して珠数《じゅず》をつまぐりながら、何《なに》か祈《いの》りはじめますと、不思議《ふしぎ》にもうりがむくむくと動《うご》き出《だ》しました。さてこそ怪《あや》しいうりだというので、お医者《いしゃ》の忠明《ただあきら》が針療治《はりりょうじ》に使《つか》う針《はり》を出《だ》して、「どれ、わたしが止《と》めてやりましょう。」 といいながら、うりの胴中《どうなか》に二所《ふたところ》まで針《はり》を打《う》ちますと、なるほどそのままうりは動《うご》かなくなってしまいました。そこで一ばんおしまいに義家《よしいえ》が、短刀《たんとう》をぬいて、「ではわたしが割《わ》って見《み》ましょう。」 といいながらうりを割《わ》りますと、中には案《あん》の定《じょう》小蛇《こへび》が一|匹《ぴき》入《はい》っていました。見《み》ると忠明《ただあきら》のうった針《はり》が、ちゃんと両方《りょうほう》の目にささっていました。 そして義家《よしいえ》がつい無造作《むぞうさ》に切《き》り込《こ》んだ短刀《たんとう》は、りっぱに蛇《へび》の首《くび》と胴《どう》を切《き》り離《はな》していました。 御堂殿《みどうどの》は感心《かんしん》して、「なるほどその道《みち》に名高《なだか》い名人《めいじん》たちのすることは、さすがに違《ちが》ったものだ。」 といいました。

     六

 八幡太郎《はちまんたろう》は七十|近《ちか》くまで長生《ながい》きをして、六、七|代《だい》の天子《てんし》さまにお仕《つか》え申《もう》し上《あ》げました。ですからその一|代《だい》の間《あいだ》には、りっぱな武勇《ぶゆう》の話《はなし》は数《かず》しれずあって、それがみんな後《のち》の武士《ぶし》たちのお手本《てほん》になったのでした。

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